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dAppsとは?
dApps(ダップス)はDecentralized Applicationsの略であり分散型アプリケーションを意味します。従来のアプリケーションとは異なり、ブロックチェーン上に記録されるオープンなものです。
dAppsの定義
dAppsの定義について、dAppsのVCファンド(Venture Capitalの略で投資会社やファンドのこと)と、factomの代表でもあるDavid Johnston氏は以下の様に定義しています。
- オープンソース(誰にでも公開されるソースコード)であること。
- 特定の管理者による管理を受けず(非中央集権)、オペレーションは自動であること。
- 単一障害点(ある一点の機能不全でシステム全体に影響してしまう点)を防ぐため、データは分散されたブロックチェーンに保存されること。
- 流通可能なトークンがアプリケーション上で使用され、それが参加者に報酬という形で支払われること。
- そのトークンを多数管理するような主体は存在しないこと。
- ユーザーの要望や改善要求に応じて仕様の変更が行われること。
以上の定義を満たすものがdAppsとして定義されます。つまり中央集権的なRippleはdAppsではないように、全ての仮想通貨がdAppsというわけではありません。
dAppsの特徴
dAppsは実際に従来のアプリケーションとどのような点が異なるのでしょうか。それぞれ比較してみます。
dAppsの特徴 | 従来のアプリケーション | dApps |
信頼性 | 比較的低い (中央のコントロールの完全に信用する必要がある) |
高い (オープンソースであるためユーザー同士の監視が可能) |
アップデート | 容易 (必要な手続きのほとんどは中央のコントロールで行うため) |
困難 (参加者全てがノードを更新する必要があるため) |
ユーザー報酬 | なし | あり(トークンとして) |
支払い | クレジットカードなどの認証やPayPalとの統合が必要 | ETHなど共通の支払い手段による送受信が可能 |
以上のようにdAppsにもアップデートの際のデメリットもありますが、それ以外は従来のアプリケーションに比べて極めてスムーズかつ安心なアプリケーションであるといえます。
dAppsのメリット・デメリット
先ほどdAppsのデメリットにアップデートの困難さを挙げました。ここではさらに詳しくdAppsのメリット・デメリットについて解説していきます。
dAppsのメリット
dApps最大の特徴は先ほどの定義でも述べたように非中央集権的であることです。これによって以下の3点が主なdAppsのメリットとして挙げられます。
- ユーザー同士の監視が可能なことによるトラストレス(信用不要)である点。
- システム全体のサーバーダウンの危険性が少ない点。
- 中央管理者が不在、つまり中間搾取(中間マージン)がない点。
dAppsのデメリット、課題
続いてdAppsのデメリット、さらに今後の課題点について見ていきましょう。先ほど述べたアップデートの困難さに加えて以下4点が挙げられます。
①スケーラビリティ
スケーラビリティとはブロックチェーンでの処理がブロックの容量に釣り合わず遅れてしまうことです。dAppsのみならずブロックチェーン関連分野全体において、真っ先に解決すべき問題となっています。
②スマートコントラクトの実行速度
スマートコントラクトとはイーサリアムの契約の自動化機能を指します。
第三者を介さない点やそれによる時間の節約によって大幅なコストダウンが期待出来るため、多くのdAppsがイーサリアムネットワーク上で制作されています。
しかし多くのユーザーが参加・共有し合って成り立つP2P(分散)ネットワークであるため、低スペックノードが参加している場合、ネットワーク全体の処理速度が低下する可能性が指摘されています。
③セキュリティー問題
安全面も慎重に考慮しなければならない項目の1つです。後述するThe DAO事件のようなハッキングやミスコード、バグが発生した場合、数十億から数百億もの被害が出る可能性もあります。
スマートコントラクトは一度実装してしまうと、ミスコードやバグなどの設計ミスを元に戻すことは難しいため、徹底的なテストやレビューを行う必要があります。
④手数料が高くなる可能性
人為的な中間搾取はなくとも、イーサリアムのブロックチェーンを利用するため手数料(Gas)は発生します。
これはコンセンサスアルゴリズム「PoW」(プルーフ・オブ・ワーク)に基づき、貢献者に報酬として支払われるものです。
スケーラビリティと同様にトランザクションが大きいほど、または複雑なスマートコントラクトになるほど、必要な手数料が多くなります。
そのため、多くのユーザーが低コストで利用できるようにスケール(拡大)していくこと、またはEOS(イーサリアムと競合するdAppsプラットフォーム)のような手数料を必要としないシステムの構築が求められます。
dAppsの活用例
次にdAppsの実際の活用例をゲーム・分散型取引所(DEX)・データストレージ管理・ID認証、本人確認、その他の5つに分類して紹介していきます。
dappsゲーム(ブロックチェーンゲーム)
多くのゲームがイーサリアムに還元、つまり現金化が見込める仕様となっており、遊びながら稼げるという非常に効率的に楽しむことの出来るゲームが多くリリースされています。
Etheremon(イーサエモン)
イーサエモンはモンスターの育成・対戦ゲームです。ユーザー同士の対戦や取引に応じてEMONTと呼ばれるトークン(ETHや現金への交換可)を得ることが出来ます。
いわゆる、「イーサリアム版ポケモン」という立ち位置でバトルはもちろんのこと、ステータスやレベルアップ、進化など、RPG要素の強いdAppsゲームとなっています。
Cryptokitties(クリプトキティーズ)
Cryptokitties(クリプトキティーズ)は猫の収集・育成ゲームです。”Crypto”は暗号という意味も持っており、暗号通貨(Cryptocurrency)のスペルにも使われています。
猫の売買や2匹の交配によって新たな猫をゲットすることも出来ます。希少価値の高い猫は非常に人気が高く、1,000万円以上の値が付くこともあるほどに人気を博しています。
Aethia(イーサごっち)
別名イーサごっちとも呼ばれる(公式サイトでもこの愛称)Aethiaは、名前の通りイーサリアム版たまごっちです。卵から生まれるイーサごっちを育てたり、オークションにかけてETHへの高額換金を目指します。
Etheroll(イーサロール)
Etheroll(イーサロール)はルーレットをもとにしたギャンブルゲームとなります。ルールは簡単で、1から99までの数字を選び、ルーレットより数が大きければ勝ちというものです。
掛け金から勝率(低いほどリターンが大きい)まで設定できるため、自分に合った楽しみ方が出来るのも高い信頼性・透明性を誇るdAppsならではの利点であると言えます。
分散型取引所(DEX)
Mt.Goxやコインチェックの事件が代表されるように中央集権的な、つまり主体的な企業が運営する取引所にはハッキングの危険性が心配視されています。その解決策として注目を浴びているのがDEX(分散取引所)です。
P2P技術による高い透明性を誇るDEXなら秘密鍵を預ける必要はない、つまり自分で管理することが可能なので取引所に預けていた仮想通貨が奪われてしまう・流出してしまうリスクは格段に下がります。
EtherDelta(イーサデルタ)
EtherDelta(イーサデルタ)は他の多くの取引所とは異なり、マイナーなトークンも扱っている(300種類以上)ことが大きな特徴です。価格帯の低いうちに目をつけ、将来有望なトークンにいち早く投資することが可能です。
0x(ゼロエックス)
多くのDEXは1つ1つの処理(入金・出金・取引など)にブロックチェーン利用による手数料(数十円~)がかかりますが0x(ゼロエックス)はこれらをオフチェーン上で処理することで手数料の削減を目指しています。
Kyber Network(カイバーネットワーク)
取り扱う通貨は11種類と平均的ですが、Kyber Network(カイバーネットワーク)の特徴は、価格変動リスクに備えたデリバティブ(金融派生商品)取引導入を目指している点です。
さらにイーサリアムの開発者、Vitalik Buterin氏がアドバイザーとして開発に携わっており、期待値はDEXの中でも非常に高い位置にあると言えます。
Bancor(バンコール)
Bancor(バンコール)はBancorプロトコルという独自のプロトコルで価格決定メカニズムと準備金制度による流動性の問題(市場動向や取引量等の状況による処理の遅延や中止リスク)の解決を目指しています。
準備金制度とは、売りたくても売れないコイン(価値が上がると踏んで仕入れたがなかなか上がらない)を買い手がいなくても売却が出来るよう事前に準備金として発行金額の1%を用意しておくものです。
また、トークン同士の合体(トークンリレー)によって、準備金不足の予防や流動性の上昇を図ることが出来ます。GNOBNT(GNO+BNT)やBNBBNT(BNB+BNT)がこれに当たります。
以上のように有望なDEXを4つ紹介しましたが注目はやはりEtherDelta(イーサデルタ)です。非常に多くの種類のトークンを売買できるためリターンの大きな投資(そのほとんどは外れの可能性が高いでしょうが)が期待出来ます。
データストレージ管理
スマホ普及が急速に進む現代において、クラウドストレージサービスはまさに必要不可欠な存在となっています。ストレージの提供サービスもdAppsで安全に管理しようという動きが出ています。
中央集権的な、つまり企業が運営するサービス(Dropbox等)とは異なり、ブロックチェーンによる高セキュリティ、低コスト、強固なサーバーダウン耐性を実現しています。
代表されるサービスとしては、Storj、Siacoin、Filecoin、Bluzelle等が挙げられます。いずれも貸し出された個人のPC空き容量を利用出来るというもので、大きな違いはありません。
現在はStorjやSiacoinが有名ですが、ICOで約200億円の資金調達を果たしたFilecoinと、MicrosoftやMUFG(三菱UFJグループ)と提携するBluzelleもとても将来性の高いdAppsとなっています。
ID認証、本人確認
ブロックチェーンの改ざん不可能な点と誰もが閲覧できる点を応用して本人確認、つまりID認証分野にもdAppsは進出しています。
現在多く見られるFacebookやTwitterによる本人確認は中央集権的なサーバーよりもさらに安全かつスムーズな管理と、紙を使用しないためコスト削減が見込めます。
1度dAppsにて認証してしまえば、様々なサービスを受ける際や使用する際にも本人確認の必要はなく、極めてスムーズな利用が可能になります。
主なID認証dAppsとしてはuPort、Civic、Selfkey、Thekeyなどが挙げられます。特にuPortはスイスのZugで個人情報の公的な登録(氏名や生年月日、市民番号など)に利用されています。
予測市場(ギャンブル)
ゲームのEtheroll(イーサロール)でも述べたようにdAppsとギャンブルは透明性の高い点で非常に相性の良いものとなっています。予測市場は文字通り未来の出来事の予測を賭けの対象として扱います。
Augur(オーガー)
Augur(オーガー/通貨単位REP)はスマートコントラクトを利用した予測市場dAppsです。Augurは占い師を、REPはreptation(評判)を意味します。
仲介者、つまり胴元が不要であり従来の胴元が儲かるような予測市場とは異なります。そのため非常に公平なシステムであると言えます。
Yes or Noで答えられるシンプルな問いに回答(投票)して賭けに参加します。正解のユーザーに報酬としてREPが配布され、不正解のユーザーは没収されます。
予測結果には、大きな集団の予測は専門家の予測より信憑性が高くなるというJames Surowieckiの The Wisdom of Crowds(群衆の知恵)が使用されており、多数決に基づいた正確なシステムです。
Gnosis(グノーシス)
一方Gnosis(グノーシス/通貨単位GNO)は予測結果の評価に集団の多数決ではなくグノーシス独自の集権的なシステムで判断するため、Augurのように結果待ちをする必要がなく、迅速な対応が可能となっています。
また、予測市場のプラットフォームであるAugurに対し、Gnosisは予測市場のアプリケーションを生み出すためのプラットフォームです。
現にハッチゲーム(THE HUNCH GAME)(有名人のゴシップ予測)や価格発見(Price Discovery)(オークションの値段予測)などがGnosisのプラットフォーム上でリリースされています。
現在はAugurが知名度、時価総額ランキング(REP#47)(GNO#127)共に優っていますが、予測結果の迅速な点や新たなアプリケーション制作土台がある点からGnosisが逆転する可能性は十分にあります。
その他のdApps
その他のdApps事例を紹介していきます。
ビットコイン
意外と知られていないかもしれませんが、ビットコインも冒頭の定義を満たしているのでdAppsになります。知名度、時価総額共にトップに君臨しているdAppsです。
DAO
dAppsはクラウドファンディング(ICOプロジェクト)にも応用されています。ICOとはトークンを発行して資金調達を行うことです。
DAO(Decentralized autonomous organization)は自律分散型組織を意味します。2016年5月には約160億円もの資金を調達し当時の過去最高額を記録しました。
しかしその1ヶ月後にスマートコントラクトの脆弱性を突かれ、集めた資金の大半が盗まれてしまいます(The DAO事件)。
これにより使用していたイーサリアムはイーサ(ETH)とイーサリアムクラシック(ETC)に分裂(ハードフォーク)することとなりました。
これからのdAppsはこの事件を教訓にして、バグがないかの徹底的な検証と、安全性を確実なものにしそれを世間が認識できるほどに成長していくことが求められます。
OmiseGO
日本人の長谷川潤氏らによってタイで創設されたFintech企業Omiseが提供する決済プラットフォーム(オフチェーンのOMGブロックチェーン+ETHブロックチェーン+スマートコントラクト)です。
ユーザーにデジタルウォレットを、開発者にはウォレットSDKを提供することで、決済・送金・ポイントサービスなどの機能をOMGネットワークで展開し、東南アジアでNo.1の決済プラットフォームを目指しています。
東南アジアでは銀行口座を持っている人たちが少ないため、クレジットカードが日本ほど普及していません。一方でスマホの普及は進んでいるため、Omiseを使った決済を試みたのが始まりです。
銀行の数日かかる国際送金に対し、OmiseGOなら一瞬、さらに手数料も大幅な削減が期待出来ます。似たようなサービスにRippleという強力なライバルが存在しますが、非中央集権的という点で差別化が図れます。
さらにVitalik氏が開発に携わっている点、SBIホールディングスやSMBCが提携している点からも時価総額22位(2018年4月現在)と比較的高い位置にいることにも納得できます。
Ethlance
こちらは分散型人材紹介アプリケーションになります。名前通り、イーサリアムのブロックチェーン上(Eth)でフリーランス(lance)のデザイナーやプログラマー、ライターなどに特化したサービスです。
前述したメリットにもあるように、 dAppsであれば従来のような仲介料という搾取もなく、ブロックチェーンの透明性からマージンがないことや報酬がきちんと支払われているかを簡単に確認することが出来ます。
現在、Ethlanceには400人を超えるフリーランサーが登録しています。終身雇用の時代は終焉を迎え、職や働き方の多様化が進む現代日本において需要はかなり高いのではないでしょうか。さらなる拡大に期待です。
dAppsの将来性
これら多くの分野で活躍が期待されるdAppsですが、FacebookのCEO、Mark Elliot Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏も dAppsについて以下のように述べています。
現時点でテクノロジー分野において最も興味深いトピックの一つは中央集権と非中央集権の対比だ。
我々の多くは、テクノロジーに興味を持ったが、それはテクノロジーが個々人に力を与えるような分散化する原動力になると信じているからだ(Facebookのミッションは「人々に力を」だ)。
1990年台から2000年台にかけて、殆どの人がテクノロジーは分散化する原動力になると信じていた。
このように世界的人物もテクノロジーの中央集権と非中央集権の対比を取り上げているほどdAppsの波は広がっています。
また、冒頭の定義を言及したDavid Johnston氏も dAppsの可能性について以下のように述べています。
優秀なインセンティブ構造、柔軟性、透明性、弾力性、および分散された性質で、ユーティリティ、ユーザーベース、およびネットワークの評価において、世界の大手ソフトウェア企業を凌駕するだろう。
以上のようにdAppsを評価しており、身の回りのものほとんどのものが分散化される時代がそう遠くない将来が実現するかもしれません。資本主義という近代国家の枠組みを根本から変えるほどの可能性を秘めています。
手数料やスケーラビリティなどまだまだ解決すべき問題はありますが、世界を変えるだけの将来性を持った dAppsに今後一層の注目とさらなる発展に期待しましょう。
編集部おすすめのdAppsゲームはイーサエモンです!日本語にも対応しており、登場するモンスターも可愛く、初めてdAppsゲームを触ってみるという方には特にオススメです!